『世界一の物語』 ~人生を成功に導くサクセス・ファンタジー~
 ここはどこ?
 ゆらゆらと光が踊り、四方の壁に椙子の姿がぼんやりと映っていた。
 銀紙……、
 椙子は銀紙に囲まれていた。
 どうなっているの……、
 訳がわからなくなった。
 それでもじっとしていられず、正面の銀紙に触れると、ゆっくりと何かが浮かび上がってきた。
 赤ちゃん?
 そうだった。
 生まれたばかりの椙子だった。
 あっ、ママとパパ、
 (こぼ)れんばかりの笑みを浮かべている両親の顔が見えた。
 しかし、すぐに場面が変わった。
 病院?
 高熱にうなされている幼い椙子がいた。
 その傍らで、看病する両親の必死な顔が見えた。
 あの時は辛かったな、と思い出した時、また場面が変わった。
 自転車?
 補助輪を外した自転車にまたがる椙子がいた。
 後ろで支えるパパと心配そうに見守るママの顔が見えた。
 そうだった。
 パパとママのおかげで自転車に乗ることができたのだ。
 その時の喜びが蘇ってきて「ありがとう」と言おうとすると、また場面が変わった。
 トロフィー?
 全国ピアノコンクールで優勝した椙子がいた。
 花束を持った椙子の横には、涙をいっぱい貯めて喜ぶ両親がいた。
 そのあとも次々に両親との日々が浮かび上がってきた。
 そして、そのどれもが無私の愛に包まれていた。
 あ~、自分がどれだけ愛されていたのか、
 当たり前すぎて、ありがたいと思ったことは一度もなかった。
 わたしって……、
 何不自由ない今の生活が当たり前と思っていたことが恥ずかしくなった。
 ごめんなさい、そして、ありがとう。
 銀紙に映る両親に囁いた瞬間、その姿は消え、見たこともない顔が現れた。
 
 
 
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