幼馴染の御曹司との契約結婚には秘密があって!?
再会
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日中に降り続いていた雨の余韻が残る午後七時。
五月の大型連休初日である今日、私――駒井柚葉は都内にある外資系高級ホテルを訪れていた。
荘厳な雰囲気に包まれたロビーで待ち合わせをしているのは二つ年上の義姉、駒井梨央。
彼女は今、ホテル内で開かれているパーティーに参加している。忘れ物をしたらしく届けてほしいと頼まれたのだ。
「リップなんてなくても困らないのに」
わざわざ届けるほど今すぐに必要なアイテムだとは思えない。
それでも梨央ちゃんの頼みは絶対だ。断ろうものなら機嫌を損ねて文句を言うのが目に見えている。
そうなると面倒なので、梨央ちゃんに言われた通り忘れ物を届けるのが正解だ。
「はぁ……。お腹すいたな」
ひとり暮らしのアパートで夕食の準備を終えて、食べようとしたところで梨央ちゃんからのメッセージが届いた。
〝大至急〟とのことだったので空腹を我慢してアパートを出た。それから梨央ちゃんの家に立ち寄り、忘れ物のリップを持ってから電車を乗り継いでここに来た。
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