幼馴染の御曹司との契約結婚には秘密があって!?
再会



 ***

日中に降り続いていた雨の余韻が残る午後七時。

五月の大型連休初日である今日、私――駒井(こまい)柚葉(ゆずは)は都内にある外資系高級ホテルを訪れていた。

荘厳な雰囲気に包まれたロビーで待ち合わせをしているのは二つ年上の義姉、駒井梨央(りお)

彼女は今、ホテル内で開かれているパーティーに参加している。忘れ物をしたらしく届けてほしいと頼まれたのだ。

「リップなんてなくても困らないのに」

わざわざ届けるほど今すぐに必要なアイテムだとは思えない。

それでも梨央ちゃんの頼みは絶対だ。断ろうものなら機嫌を損ねて文句を言うのが目に見えている。

そうなると面倒なので、梨央ちゃんに言われた通り忘れ物を届けるのが正解だ。

「はぁ……。お腹すいたな」

ひとり暮らしのアパートで夕食の準備を終えて、食べようとしたところで梨央ちゃんからのメッセージが届いた。

〝大至急〟とのことだったので空腹を我慢してアパートを出た。それから梨央ちゃんの家に立ち寄り、忘れ物のリップを持ってから電車を乗り継いでここに来た。


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