春待つ彼のシュガーアプローチ
「それじゃあ、関係者なら口出しOKなんだよな?」
その声を聞いて私が後ろを向くよりも先に、氷乃瀬くんが目の前に立っていた。
「あ、あのね…灯くん。その子がモップに足をぶつけてきたから優しく注意してただけなの。それなのに、隣にいる子が謝れとか意味不明なこと言い出すから」
急に猫なで声に変わった。
それはそうと、経緯を簡略化し過ぎていて事実と異なっている部分があるんですが…。
「言っておくけど、好きになったのも告白したのも俺の方からだよ。それが事実。俺からすればアンタらの方が部外者だから、勝手な憶測で発言するのはやめてくれない?」
氷乃瀬くんが語気を強めると、キャラメル色の髪の女の子と取り巻きの女の子たちはバツの悪そうな顔を浮かべる。
そしてモップを掃除用具ロッカーに雑に入れると、そそくさと立ち去ってしまった。
「萌絵ちゃん、巻き込んじゃってごめんね」
「先に吹っ掛けてきたのは向こうなんだから、栞ちゃんは悪くないよ!」
そう言った後、萌絵ちゃんは口元に手を添えながら私に顔を近付けてきた。
「さっきの子、4組の三雲 有珠さん。氷乃瀬くんを本気で狙っていて、氷乃瀬くん推しの女の子たちと過去に何度もトラブルを起こしたことがあるから栞ちゃんも用心してね」
それってつまり、要注意人物ということなのでは?
コクコクと小さく頷くと、萌絵ちゃんは“先に戻るね”と言って急ぎ足で教室の方へ行ってしまった。