春待つ彼のシュガーアプローチ
「陽咲、大丈夫?」


「うん…。助けてくれてありがとう。もしかして三雲さんとの会話聞いてた?」


「そこの階段を降りている途中で聞こえてきた。あの女、通る声だから」


「そっか…」


さっきの三雲さんへの言葉からして、ほぼ一部始終のやり取りを聞かれてしまったっぽいな。


「あのさ、ちょっといい?」


突然、氷乃瀬くんは私の手を引いて廊下を歩きだす。


そして空き教室に入ると扉を静かに閉めた。


「急にどうしたの?」


「もし、この関係を続けるのが嫌になったら“やめたい”って言ってくれていいよ」


「えっ?」


「さっきの女みたいに、陽咲に暴言を吐いたり酷いことしたりする奴が今後も出てくるかもしれない。もちろん俺は全力で守るけど、どんな時も陽咲の側に居られるわけじゃないからさ…」


氷乃瀬くんは顔を曇らせる。


「前に、絶対に振り向かせてみせるなんて強気なことを言ったけど、辛い思いや不快な思いをさせてまで、何がなんでも陽咲を彼女にしたいとは思ってない。だから……」


「私は、このまま続けるよ」


その言葉がとても意外だったようで。


俯いていた氷乃瀬くんは弾かれたように顔を上げた。


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