春待つ彼のシュガーアプローチ

「すぐ戻るから、ちょっとここに居て」


コンビニの裏手に移動すると、それだけ言って店舗に戻ってしまった。


どうしたんだろう。


ま、まさか……


クリアファイルを私に返そうとして、中に挟んであるプリントを抜きに行ったのでは?


あれは担任の先生がプリント類を入れて鮎川くんに託したものだと思うから、私のものではない。


追いかけて伝えた方がいいかな。


ソワソワしていると、ものの数分で氷乃瀬くんは帰って来た。


「これ、持って行って」


差し出されたコンビニ袋。


中を覗くと、個包装されたパウンドケーキとマドレーヌが入っていた。


「プリント届けに来ただけなのに、こんなに貰うのは悪いよ…」


「このお菓子、数日前に店長の奥さんが旅行で買ってきたお土産なんだよ。俺、そんなに甘いもの食べないからおすそわけ」


「本当にいいの?」


「むしろ貰ってくれるとありがたい」


頑なに遠慮するのも困らせてしまうだけだよね。


「それじゃあ、いただきます」


夕食後のデザートということで、お母さんと一緒に食べよう。


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