春待つ彼のシュガーアプローチ

「陽咲、どうした?」


「ううん、何でもないよ。引っ越すとなると荷物整理とか手続きとか色々と大変だよね」


「手続き関係は親が殆ど進めてるから俺はそれほどじゃないよ。学校の手続きが多少あるぐらいかな。その分、荷物まとめたり家の中の片付けや掃除は率先してやってるけど、なかなか思うようには進まなくてさ」


「そっか」


学校が終わった後はアルバイト。


帰宅したらゆっくり休みたいはずなのに、引っ越し準備を頑張っているんだ。


「忙しい時期だと思うけど体調には気を付けてね」


「ありがと。それでさ、一つお願いがあるんだけど…」


少し警戒するように周りを見回してから、氷乃瀬くんは私の耳元に顔を近付けた。


「俺が引っ越すこと、誰にも言わないで欲しいんだ。特に女子の耳に入ると面倒なことになるというか、支障が出る可能性があるから」


「分かった、内緒にするね」


氷乃瀬くんがここまで言うぐらいだから、きっと今までに色々とあったんだろうな。

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