バッカスの女神様はオトコを知らない
<宴の後のハプニング>

広間に静寂が戻った。

「ふぅ・・・」

デラシアは階段を降りて、玄関の鍵をかけた。

ダニエルがこの館の持ち主なのだから、どう使おうが、文句を言うことはできない。

が、うるさくて眠れないのは勘弁してほしい。

デラシアは玄関脇の使用人の寝室のドアを開け、質素な生成りの綿の寝間着に着替えた。

ベッドの布団にもぐりこむと、次の瞬間、起き上がった。

「そうだ!お酒を持ってこなくちゃ」

ジュリアの旦那が、勝手口に酒瓶を毎晩、置いていくのだ。

料理人だけあって、いろいろな種類の酒を小瓶につめてくれる。

それを味わうのも、デラシアの密かな楽しみだった。

酒の種類をノートに記録をして、厨房で出した料理のレシピを思い出して書き留める。

薬草リキュールの新作を出したいので、何かヒントになるものはないか。

寝間着に薄いウールのショールを羽織り、デラシアがドアを開けた瞬間、身をすくめた。

すぐ脇の玄関ホールのソファーに、何か長いものが横たわっているではないか!

クゥーー、クゥーーー

寝息なのか、規則正しい呼吸音。

シャツははだけ、ネクタイもよれている。

ブラウンくせ毛は、あちこちに飛んでいる。

はだけた胸から肩にかけてドラゴンの入れ墨が見えて、それは呼吸とともに上下する。

ドラゴンが、いびきをかいているのではないか?
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