バッカスの女神様はオトコを知らない
<王室御用達コンペ>

「はちみつ酒は、世界で最古の酒です。
原料もはちみつ、水、酵母菌とシンプルです」

ダニエルが黒のタキシード姿で、審査員たちがずらりと並ぶテーブルの前で声をあげた。

「シンプルゆえにアレンジも多種多様、テイストもバリエーションも広がる。
それでは前菜ですが、今日はチーズ、生ハムをご用意しました」

控えていた給仕たちが、すぐに前菜の皿を出した。

「はちみつの種類によっても、香りや風味が違います」

審査員たちはグラスを揺らし、香りをかいでいる。

「ジュリアスシーザーも愛飲したと言われ、もちろんクレオパトラも一緒に飲んだでしょうね」

ダニエルのプレゼンは上手い。

巧みにユーモアを混ぜて、審査員の関心を引き付ける。

「今、お飲みいただいているのはアルコール度数が11度です。飲み口は爽やかでしょう」

デラシアは、柱の陰で審査員たちの表情を見つめていた。

食べ終えた皿が次々と片づけられる。

「メインはジビエです。野性味あふれる秋の料理に合わせました。
鹿肉のローストをお楽しみください。
アルコール度数は15度です。料理に負けない骨太の味わいを感じていただけます」

審査員たちが、うなずいている。

静かな空間にカトラリーの音だけが響く。

「デザートはアイスクリームですが、凍らせてシャーベット状にしてかけています」

飲まない酒は斬新だ。

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