深を知る雨
第五章

2201.01.22




 《18:00 Aランク寮》


パフォーマンスの練習が終わり、Aランク寮に遊びに来たある夕方。

私は私が指定したダンスとは別のダンスを練習している様子の薫と里緒を見て叫んだ。

「ええ~っ!?何で!?何でこのダンスにしないの!?」
「しねぇよ、大の男がそんなセクシーダンス踊ってもきめぇだけだろうが!」
「えーっ!大の男が踊るからいいんじゃん!?分かってねーなぁ薫は!」
「つーかお前はマジでEランクのことだけ考えてろ!どうなってんだよ、Eランクのパフォーマンスは!」
「こっちもダンスなのには変わりないんだけど、ちょこっと能力使うことになったぜ!」

と言っても能力を使うのは私ではない。

Eランク隊員の中に二人ほどフロリゲンを操れる能力者がいて、その二人に頑張ってもらって踊ってる最中花を咲かせるのだ。

踊るのはワルツ。Eランク隊員の半分が女装をして女役になる。

まだ決まってないけど、私も運が悪けりゃ女の格好することになるんだよなぁ……私が女だって知ってる遊や楓が聞いたら笑うかもしれない。

……あれ?そういえば。

「今日遊いないの?」
「一昨日の夜から帰ってきてないのよ」

私の質問に即答したのは楓だった。

さっきからソファに座って難しい顔で足を組んでる。

「何で?実家に帰ったとか?」
「知らないわ。何も聞いてない。……何か、嫌な予感がするわ」
「まぁそのうち帰ってくんだろ。あいつも子供じゃねぇんだしいちいちどっか行くのに報告とかしねぇよ」
「でも電話にも出ないのよ?おかしくない?」

そんなことは今まで無かったのだろう、楓は本気で心配している様子だ。

うーん、多分大丈夫だとは思うけど、後で遊の端末の位置情報割ってみるか、なんて思っていた時。

珍しくAランク寮の呼び鈴が鳴った。

楓は玄関の映像を出し、そこに映った女を見て首を傾げた。

「……誰?あんた」

そこにいたのは、

『こんばんはぁ、初めまして。相模遊のことで少しお話したいことがあって来たわぁ』

―――Aランク隊員とは恐らく初対面であろう、麻里だった。

「……居間にいるから、入ってきて」

楓がボタンを押してAランク寮のドアを開ける。

玄関の監視カメラ映像には、麻里が入ってくる姿が映った。

……何だろう、遊のことって。麻里と遊って面識あったの?



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