極道に過ぎた、LOVE STORY
 「どうして?」

 康は、目をきょとんとさせて言った。

 「こっちが聞きたい。私の事知っているでしょ?」

 「まあね。真面目な優等生。今回のテストもトップだっただろ」

 「そこじゃなくて。私の名も聞いてるでしょ?」

 「直接、あんたからは聞いてないけどね」

 私は、席を立っって、康の方へ向きを変えた。

 「私は、轟川幸」

 それだけで十分だろう。


 「じゃあ、幸ちゃんて呼べばいい?」

 康は私の事を知らないのだろうか? そんな事はないだろう? さっきも、私達の横を通り過ぎが学生が「やばいよ、組長の娘だろ?」と、言って通り過ぎた事に、気付かないわけがない。


 「ふざけるのもここまで。分かっているなら、自分の身を案じな」

 私は、吐き捨てると、そのまま図書館への道をまっすぐに歩いた、

 康が、後を追ってくる事はなかった。これでいい。いつもより、少し手こずっただけだ。


 数日後、講堂に入り適当な席に座る。当然、隣に誰かが座る事などない。

 「幸ちゃん、隣りいい?」

 嫌な予感がして、顔を上げると、康がにこりと微笑んで座った。

 まだ分からないのだろうか? だとしても、もう、私には関係ない。隣の席は私の物ではないのだから、答える必要もない。


 それなのに、また、ペアでやらねばならない課題を出されてしまった。

 「図書館でやるか?」

 講義が終わると、席を立とうとする私のレポートを奪うように手にとって康が言った。

 何を言ってもダメなようだ。私は黙って歩き出す。


 「あっ。康くん!」

 目のぱっちりした可愛いらしい女の子が声をかけてきたが、私の姿に一瞬怯み、またねと去って行った。だから、近づかないで欲しいんだ。


 図書館に向かうと、空いている席に座った。

 「ねえ。何か怒ってる?」

 康の整った顔が、少し困ったように私を見た。

 「どうして分からないの? 私の近くにいたらろくなことにならない」

 「そんな事は、分からないだろ? 少なくともレポートの課題は熟せる」

 私には、康の真意が全く分からない。


 私は大きなため息をつくと、机の上にレポートを広げた。とっとと終わらせてしまった方が良さそうだ。だが、思いの他、レポートに時間がかかってしまった。まあ、一人じゃもっとかかってしまっただろうし、すごく充実した内容になったと思うけど。
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