君が愛おしくて。クールなエリートSPの甘く一途な溺愛事情
プロローグ
私の想い人
__桜が咲く季節になると決まって彼を思い出す。
「お待たせいたしました。こんな感じでいかがでしょうか?」
胸に抱えているのは鮮やかな紺色の和紙でラッピングされた薔薇の花束。飾り付けには薔薇の色と同じピンクのループリボンをつけた。
「あら、かわいい。やっぱり花音さんが作ってくれるお花は素敵ね」
「あ、ありがとうございます!」
(褒められた……)
嬉しくて思わず頬がぐっと上がる。
私、今井花音(いまい かのん)はフラワーショップ『花音』の販売員兼オーナー。フラワーデザインの専門学校を卒業し、ショップ店員として下積みをして働くこと五年。夢だった自分の店をもつことができた。それから早三年、この店には今では毎週のように来てくれる常連さんもいる。十畳ほどの広さしかない小さな花屋だけど私にとってここは宝物のような場所。
今日もここで働けることを嬉しく思う。
外に出ると店の前にある桜の木の花びらが緩やかな春風に乗り青空に舞っていた。
「綺麗ね」と言うお客様に隣に立った私も「綺麗ですね」と返し二人でその光景を見上げた。
「……思い出すな」
気づけば独り言を言っていた私にお客様は首を傾げる。
「あっ、すいません……!」
慌てて謝るとお客様は「ふふっ」と笑みをこぼす。
「誰か、大切な人のことでも思い出したのかしら?」
「いえ、そんな、そう言うわけでは……」
そう言いながら頬は赤く染まっていく。そんな私の姿を見たお客様はまた「ふふっ」と笑みをこぼした。
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