君が愛おしくて。クールなエリートSPの甘く一途な溺愛事情
少しして、テーブルに私と要くんのお茶が置かれる。
「ありがとうございます」
要くんがお礼を言うと、お父さんは控えめに頷き、テーブルを挟み正面にあぐらをかいた。
我関せずといった様子で、頬杖をつきそっぽを向くお父さん。
家には入れてくれたが、来たことを良く思われていないのかもしれない。
「今日は、お父様にご報告とお願いがあります」
そんなお父さんに折れることなく、要くんは話をする。
「僕たち、結婚することになりました。すでに一緒に住んでいます。それで……」
要くんはバッグから婚姻届を取り出し、テーブルの上に置く。
「お父様に、証人になっていただきたいと思いまして」
お父さんは、なんとも言えない表情で、目の前に置かれた婚姻届を見た。
「……」
何を思っているのだろうか。その表情からは、何も読み取れない。
数秒、婚姻届を見つめると、お父さんは婚姻届を押し返した。
無言で戻された婚姻届に、私の胸には小さな絶望が広がった。
(やっぱり、お父さんは私なんかのこと……っ)
「……俺はサインしない」
「理由をお聞きしても?」
お父さんは少しの間、沈黙すると、ぽつりと言った。
「そんな資格はない」
(……お父さん……?)
「そいつから、昔の話は聞いてないのか」
「聞きました」
「なら」
「それでも、こうしてお願いしに来ました」
引かない要くんに、お父さんは呆れたようにため息をつく。
「君にも分かるだろ。俺は……父親なんかじゃない」
そう言ったお父さんの視線は、お母さんの写真に向けられた。
「真優は……こいつの母親は、とても優しいやつだった。親切で、誰からも好かれた。俺みたいなろくでなしを愛するぐらい、愛情深くて、心が綺麗だった」
例えるなら、風のように自由で、花のように慎ましい人。お父さんは、お母さんのことをそんな風に言っていた。
お母さんの話をしているお父さんはとても幸せそうで、お父さんは、本当にお母さんのことが大好きなんだと思った。
「真優が亡くなってから、初めは上手くやれていた。でも、段々とこう思うようになった。なぜあいつは死んで、この子が生きているのかって……な? 酷いだろ?」
「……」
苦い表情をする要くん。自嘲した笑みを浮かべ問いかけるお父さんに、何も言えないようだった。
「こんな父親と二人で暮らすよりも、新しい家族がいた方がいいと思って再婚もした。結局、一年ともたなかったがな」
「えっ……」
(お父さんが再婚したのは、私のため……?)
お父さんの目が細められる。
何かに耐えるその姿は、苦しさと悲しさに蝕れているようだ。
「……忘れられない。真優を、忘れられるはずがないんだ」
正直、お父さんがなぜ今もここに住んでいるのか不思議だった。ここには、お母さんとの思い出があり過ぎて、お父さんには苦しいはずだから。
だけど、話を聞いて分かった。ここを離れてしまうこともできないくらいに、お父さんにとって、お母さんの存在は何よりも重かったんだ。
「ありがとうございます」
要くんがお礼を言うと、お父さんは控えめに頷き、テーブルを挟み正面にあぐらをかいた。
我関せずといった様子で、頬杖をつきそっぽを向くお父さん。
家には入れてくれたが、来たことを良く思われていないのかもしれない。
「今日は、お父様にご報告とお願いがあります」
そんなお父さんに折れることなく、要くんは話をする。
「僕たち、結婚することになりました。すでに一緒に住んでいます。それで……」
要くんはバッグから婚姻届を取り出し、テーブルの上に置く。
「お父様に、証人になっていただきたいと思いまして」
お父さんは、なんとも言えない表情で、目の前に置かれた婚姻届を見た。
「……」
何を思っているのだろうか。その表情からは、何も読み取れない。
数秒、婚姻届を見つめると、お父さんは婚姻届を押し返した。
無言で戻された婚姻届に、私の胸には小さな絶望が広がった。
(やっぱり、お父さんは私なんかのこと……っ)
「……俺はサインしない」
「理由をお聞きしても?」
お父さんは少しの間、沈黙すると、ぽつりと言った。
「そんな資格はない」
(……お父さん……?)
「そいつから、昔の話は聞いてないのか」
「聞きました」
「なら」
「それでも、こうしてお願いしに来ました」
引かない要くんに、お父さんは呆れたようにため息をつく。
「君にも分かるだろ。俺は……父親なんかじゃない」
そう言ったお父さんの視線は、お母さんの写真に向けられた。
「真優は……こいつの母親は、とても優しいやつだった。親切で、誰からも好かれた。俺みたいなろくでなしを愛するぐらい、愛情深くて、心が綺麗だった」
例えるなら、風のように自由で、花のように慎ましい人。お父さんは、お母さんのことをそんな風に言っていた。
お母さんの話をしているお父さんはとても幸せそうで、お父さんは、本当にお母さんのことが大好きなんだと思った。
「真優が亡くなってから、初めは上手くやれていた。でも、段々とこう思うようになった。なぜあいつは死んで、この子が生きているのかって……な? 酷いだろ?」
「……」
苦い表情をする要くん。自嘲した笑みを浮かべ問いかけるお父さんに、何も言えないようだった。
「こんな父親と二人で暮らすよりも、新しい家族がいた方がいいと思って再婚もした。結局、一年ともたなかったがな」
「えっ……」
(お父さんが再婚したのは、私のため……?)
お父さんの目が細められる。
何かに耐えるその姿は、苦しさと悲しさに蝕れているようだ。
「……忘れられない。真優を、忘れられるはずがないんだ」
正直、お父さんがなぜ今もここに住んでいるのか不思議だった。ここには、お母さんとの思い出があり過ぎて、お父さんには苦しいはずだから。
だけど、話を聞いて分かった。ここを離れてしまうこともできないくらいに、お父さんにとって、お母さんの存在は何よりも重かったんだ。