引きこもり婚始まりました〜Reverse〜
「めぐ」
女神様が来てくれる。
その姿が美しくて、可愛くて、閉じ込めたりするのが如何に不要で逆効果になると教えてくれた。
俺から逃げたくなったら、何の意味もない。
彼女に嫌われるなんて、絶望しかない。
何より、女神様を恐怖に陥れるなんてあってはならないことだ。
「そんなに急がなくても。俺が君から逃げてくなんて、あり得ないよ。知ってると思うけど」
「……う、別にそういう心配は……してなくもないけど、信じてはいる」
「え、なんで? こんなに激重激深に愛してるの知ってるのに。初耳……というか、違う。何かあった……? ごめん、気づかないなんて最悪だ。ごめんね。本当にごめ……」
「ち、違うってば……!! 」
神様にも、ご両親にも誓っておいてこの様。
それらしいことは聞こえなかったけど、聞き逃した?
いや。俺に限って、それはない。
(不良品? 壊れたか……。何が、“苦労して手に入れた”だ)
どうしよう。
早く癒してあげないと。
誓いの儀式は終わったことだし、何とか式場を突破して二人きりになって、慰めて……ゆっくりだ。
ゆっくり、何があったか教えてもらって、怖がらせないように安心してもらえるように慰めて。
それから、その原因を滅する手段を――……。
「ゆ、優冬くんが格好いいから、女性の目が気になるなってことが多いだけ! つ、つまり、ただの嫉妬だから忘れてください……」
(また、無理言う。この女神様、可愛すぎて神話にも出てこないと思う)
「っていうか……! 今はそんなこと思ったんじゃなくて、待たせたくなかっただけ」
そうじゃなかったのに、なぜ関係ないことを人前で白状させられてるのだろうと憮然とする彼女が可愛すぎて、クスクスと音が漏れてしまった。
「……っ、もう……」
その音が俺の声だけではなかったことに、ますます彼女の頬が染まっていく。
「ごめん。お詫びになるか分からないけど、俺も一緒に恥ずかしくなってあげる」
冷えてきてないかなと、丸い肩をそっと包むとやっぱりちょっと冷たい。
でも、この後の展開が予測できたのか、最初はじわじわ、すぐに一気に体温が上昇してきたのを感じて、再び頬へと移動させて唇を重ねる。
「……なってない。というか、優冬くん恥ずかしがってないくせに……」
(そんなことないのに)
人前は苦手だ。
群衆も好きじゃない。
もちろん、彼女のご両親の前でもある。
でも、だからこその誓いだ。
何度でも、誰の前でも誓う。
ただ、その決意だけ――とは、言い切れない。
単純に何回でもキスはしたいし、それが牽制になるなら羞恥は薄れる。
なのに、ボソボソと不満を主張する彼女は。
――やっぱり女神様で、ひたすらに可愛くて、純白のドレスが最高に似合ってる。