大嫌いな王子様 ー前編ー
花火大会がある最寄駅の改札前でみっちゃんとみっちゃんの彼氏さんと待ち合わせ。
まだ4時間ぐらい前なのにすでにすごい人。
「伊織!!」
「あっ!みっちゃんー!」
私は駆け足でみっちゃんの元へ向かう。
「あれ…?御曹司くんと……もうひとりは??」
「あっあのね!急にごめんね!暁斗くんの弟の和希くんです。和希くんも一緒にいいかな?」
結局あれから和希くんは引き下がらずついてきた。
でも、せっかくだったら和希くんも一緒が嬉しいのが本音。
和希くんにも楽しんでほしい。
「あー、噂の弟くんだね!はじめまして♪」
「どーも。よろしくです」
「みっちゃん、ごめんね!」
「全然よ〜!人数多い方が楽しいじゃん!」
みっちゃん。。やっぱり優しい。。
「あれ?彼氏さんは?」
「なんか遅れてるんよねー。待たせてごめんね」
「ううん!全然だよ」
みっちゃんの浴衣姿も初めて見る。
「みっちゃん、すごく可愛い」
「伊織こそ!その柄にして正解だね」
みっちゃんと花火大会。
大好きな人たちと一緒で嬉しいなぁ。
「御曹司くん、今日は私のワガママに付き合ってくれてありがとう」
「別に。俺も来たかったし」
暁斗くん、相変わらずの塩対応。
ひそっ
「御曹司くん、やっぱ天邪鬼だね。ってかツンデレ的な?」
みっちゃん、ほんと鋭いなぁ。
「ツンデレ…合ってるかも」
暁斗くんを見ながらクスクス笑ってると、ものすごく睨まれた。
コ、コワイ。
「それにしても…皆実家の遺伝子はすごいねぇ。。周りもみんな見てるじゃん」
「それ私も和希くんに出会った時思ったよ」
ふたり並ぶと迫力が増すせいか、より目立つため周りからもすごく見られてる。
「ねぇ〜あんたの彼氏はまだ来ないの?」
「和希くん!あんたじゃなくてみっちゃんだよ」
「はいはい、わかったよ。でも、待ちくたびれたよ〜」
マイペースなんだから……
まぁ、でもそうだな。。
待ち合わせからすでに30分は経ってる。
「みんな待たせてごめんね!もう1回連絡する!」
電話に出なくて、メッセージも返ってこない。
「なにかあったのかな…」
みっちゃん、すごく心配そう。。
そうだよね、彼氏さんになにかあったかもだよね。
〜♪
みっちゃんのスマホが鳴った。
「タケシからだ!」
タケシとはみっちゃんの彼氏さんのこと。
どうやらメッセージがきたようだ。
ひとまずよかった。
「え………」
みっちゃん?
みっちゃんの表情が曇る。
「タケシ…来れなくなったって…体調悪いみたいで。。」
「…そう……なんだ…大丈夫かな?」
みっちゃん、心配だろうな。
「えぇ〜!こんなに待たせてその連絡?ほんとに体調悪いんかなー…ぐぇっ!!」
こんなことを言い出す和希くんの頭を暁斗くんが叩いた。
「みんな…私からWデートとか言ったのにほんとにごめんね…。ごめん…」
こんなみっちゃん見たことない。
今にも泣き出しそうなみっちゃん。
ぎゅう
私はみっちゃんを抱きしめた。
「みっちゃんが謝ることじゃないよ!!」
「ありがとう伊織…」
「彼氏さん、心配だよね」
「……たぶん嘘だと思うから気にしなくていいよ」
え……!?
「やっぱ嘘なんじゃん!俺の言った通りじゃん!」
バキッ!!
さっきより数倍の音が聞こえて、和希くんは頭を抱えてうずくまっている。
「なんでそう思うか知らねぇけど、わかんねぇじゃん。」
「御曹司くんみたいな真っ直ぐな人じゃないから」
みっちゃん…
「よくわかんねぇけど、とりあえず行こうぜ」
「私もいいの…?」
「あ?なに言ってんだ?当たり前だろ。行くぞ」
みっちゃんにも容赦なく俺様。
だけど、愛のある俺様。
「みっちゃん、行こ♪」
私はみっちゃんと手を繋いだ。
「ねぇ、その彼氏と別れたら?」
「和希くん、うるさい!」
空気を読まない和希くん。