大嫌いな王子様 ー前編ー
「俺がわがままを言ったからお姉ちゃんを困らせてしまったんだよ。だから、お姉ちゃんは何も怒ってないし悪くないんだよ」


暁斗くんと晴が話すのを初めて見た。
だけどね、すぐわかった。

晴の暁斗くんを慕う姿。
暁斗くんの晴やお母さんへの真摯な姿。


この人は、私たち家族を本当に守ってくれてるんだ。



「わがまま?どんなわがまま?僕が聞いてあげるよ」

「おぉー。晴はすごいなぁ」

「うん!だって、あきお兄ちゃんがあんなすごい所に住ませてくれて、お母さんやお姉ちゃんを守ってくれてるもんね」


こんな小さな子でもわかってること。


「違うよ」

暁斗くんが立ち上がる。


「晴やお母さんを守ってるのは、いお姉ちゃんだよ」


やだ、泣いちゃう。



「坊っちゃま、そろそろお時間が…」

「あぁ、わかってる」


私はどうしたいの。


「いお」

優しく私を呼ぶ声。



「なるべく早く帰る。いい子で待ってろ」

こんな時も上から。
なによ、いい子って。


「22時超えたら寝てやるー!!」


「はは!!なんで22時なんだよ」


私ばっかり夢中だ。
でも、それでもいいんだ。



暁斗くんは不動産屋さんに話をして、食事会へと向かった。
私たちは不動産屋さんに謝り、その場を後にした。




「お母さん、なんか…振り回してごめんね」

お母さんたちのマンションへの帰り道。


「何を言ってるの!?お母さんがこんな情けなくてごめんなさい」

「ううん!違うよ!」


お互い謝ってばかり。


「お母さんもお姉ちゃんも謝ってばっかりー!やだやだ」


晴を間にして3人で手を繋いで歩く。
こんな風に歩くのも久しぶりだな。


「そうだね。ごめんね」

「お姉ちゃん、また謝ったー」

「あ、ほんとだ!ダメだ〜」


どうするのが正解なんだろう。


「ねぇ伊織」

「ん?」

「話していいかわからないんだけど、引越しの話を突然された時もちろんお母さんたちは断ったわ。私たち家族の生活や収入も全て保証するとまで言ってくれたけど、それでも断ったの。伊織が離れて暮らすだなんて考えられなくて…仕事も含めてもっと負担もかけてしまうと思って」


お母さん…

「でも、1番負担かけてるのはお母さんなんだけどね」


ううん、負担なんて思ったことないよ。


「何度も断ったのに、暁斗さん土下座をしたの。どっちかと言うと、土下座するのはこっちだと思うんだけどね?もうビックリしちゃって」

「土下座…?暁斗くんが??」

あの俺様が?



「あきお兄ちゃん、僕がお姉ちゃん守るって言ったのに俺が守るって何回も言ったんだよー!悔しいよね!」



もう、バカ

バカは私だ




「お母さん、晴…私、暁斗くんの家に帰るね」

「えぇ、でもまた泊まりに来なさいよ」

「今度は僕があきお兄ちゃんのお家行くー」



ありがとう!お母さん、晴



「夜連絡するね!」



早く会いたい


暁斗くんの家まで走ってる間に、電話をかけた。

自分でかけるのは、暁斗くんを探したあの夜以来。




プルルルルー…


やっぱり出ないよね。
大切な食事会なのに…何してるんだ私

どうしても声が聞きたくなっちゃってー…



プルルッー
「どうした?」


繋がった!!


「あ!ごめんね、えっと…!」

いざ繋がると言葉がうまく出てこない。



「は?用がないならかけてくんな。切るぞ」


ヤバイ!


「待って!!」


用ならあるもん


「声…どうしても聞きたかったから……」


これは、“用”になりませんか?



「いお」


「はい」



「絶対起きとけ。わかったな?」



「はい…」


ほんとは今すぐ会いたい
抱きしめたい
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