一ノ瀬さん家の家庭事情。®️
玲は本当は繊細で傷つきやすい。

「父さんの幸せ、俺だって祝福しないのに、心からできない自分が…ムカつく。」

玲は葛藤してるんだ。

「玲、それは悪いことじゃないと思う。」

あたしは思うの。

お母さんとの思い出はなくても自分を産んで、守ってくれたお母さん。

顔もよく覚えてなくても、声を知らなくても、手のぬくもりを知らなくても、お母さんが玲のたった一人の母親であることは変わらない。

「俺の母親の思い出が、その人だけになっちゃうのが…怖いんだ。」

やっと布団から顔を出した玲の目には涙が溜まっている。

「愛は怖くないの?」

あたしは、…

「怖くなはないよ、だってちゃんとわかってるもん。唯ちゃんと暁君があたしのこと、愛して大切に思ってくれてたってこと。」

自分の目で、耳で、手で確かめられたわけじゃないけど。

それでもわかるくらいに、二人はあたしを大切に、思ってくれてた。

愛してくれていた。
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