神殺しのクロノスタシス2
私は会話の最中、背中の後ろで、雷と炎魔法の複合魔法を作っていた。

時間稼ぎをしていたのは、そういう理由だ。

これを上手くぶつければ、パーシヴァルも…。

「…で?時間稼ぎは終わったか?軍師さんよ」

「…」

…やはり、気づかれていたか。

わざと長い会話をして、私が何かを企んでいることを。

気づかれていることも、想定内だ。

「そんな魔法で、俺を殺せるとでも思ってるのか?浅知恵だな」

「まさか。初めから、あなたと戦うつもりはありません」

「何…?」

私は、壁に向かって杖を振るった。

出口がないなら、作れば良いだけの話。

私は、渾身の魔力を込めて、雷と炎の複合魔法を壁にぶつけた。

出入り口の氷は、厚くて壊せない。

でも、氷の薄い壁なら、この威力で充分割れるはずだ。

「っ!てめぇ!」

壁がぶち破られ、隣の部屋と繋がった。

これで、逃げ道は作れた。

あとは逃げるだけだ。

しかし。

「させるか!」

パーシヴァルの氷の刃が、無数に飛んできた。

私はアイナをしっかりと抱き締め、その刃がアイナに当たらないように庇った。

「逃げなさい、アイナ。あなただけでも逃げなさい」

私はアイナを庇いながら、そう言った。

瞳に涙をいっぱい浮かべた愛娘は、いやいやと言うように、首を横に振った。

「おかあしゃま。おかあしゃまと一緒が良い」

そうね。

私も、あなたと一緒が良い。

あなたと、あなたのお父さんと、あなたの妹か弟になるお腹の子と、一緒が良い。

でも、それがアルデン人の私に、不相応な幸せだと言うなら。

せめて、あなただけでも。

「行きなさい、アイナ。逃げなさい」

「いや!おかあしゃまも一緒!」

アイナは、私にしがみついて離れなかった。

あぁ、神様。

アルデン人であることは、そんなに悪いことなのですか。

私を求め、すがりつき、涙を流す我が子を、突き放さなければならないなんて。

そんな拷問のようなことを、私にしろと言うのですか。

「あ、アイナ…」

パーシヴァルが放った氷の刃が、私の肩に刺さった。

でも、痛みは感じなかった。

私が痛いのは、心の方だった。

「逃げなさい、あなただけでも…!」

私はこの子を初めて抱き締めたときに、誓ったのだ。

何があっても、私は決して、私の母がそうしたように、自分の娘を捨てたりはしないと。

絶対に、娘を守り抜くと。

だから、その誓いを守らせてくれ。

私の背中に、また一本、ぐさりと氷の刃が刺さった。

「…っ…」

知ったことか。こんな痛みなど。

我が子を、この手で手放さなければならない苦しみと比べたら。

「行きなさい、アイナ…!あなただけでも、生きて…!」

「お、おかあしゃま…」

涙で娘の顔が見えない。

ちゃんと見たいのに。

私とアトラスさんの、愛の証であるこの子の顔を、ちゃんと見たいのに。

どうしても、涙で前が見えない。

でも、もう時間がない。

「…今生の名残は尽きたか?」

私は、迫り来るパーシヴァルを背後に感じ。

アイナを無理矢理突き飛ばそうと、手をあげた…、



そのとき。




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