神殺しのクロノスタシス2
「うぐっ…。…ってぇな、この野郎…」

前足も使うんなら、前足も使いますよって言っとけよ。

お陰で、痛い目見る羽目になっちまった。

俺は片膝を立てて座り込み、肩で息をしている有り様だった。

胸の出血と、背中に刺さった二本の矢。

一方、サディアスは無傷。

召喚魔のケルベロスに至っては、真ん中の首でベリクリーデを咥え、左の首も健在。

おまけに、先程断ち切った右の首も、少しずつ再生を始めていた。

さて、絶望的状況。

この状態から、どうやって逆転したもんかね?

まぁ、心配するな。

シルナ・エインリーは、この程度の逆境、いくつも乗り越えてきたんだ。

だったら、同じ時代を生きた俺が、こんなところでくたばるはずがないよな?

「大人しく降伏した方が、あなたの為ですよ」

と、俺を見下ろすサディアス。

ご忠告どうも。

「悪いが、俺は勝機のある戦いで降伏する趣味はなくてね」

「ここからどうやって、あなたが逆転出来ると?」

「まぁ見てろよ、若造」

俺は、背中に刺さった二本の矢を引き抜いた。

激しい痛みと共に、血飛沫が待った。

「っ…」

「ジュリス、大丈夫?痛そう」

ケルベロスの口に咥えられたまま、ぷらーんとぶら下がっているベリクリーデが、他人事みたいに言った。

「いてぇに決まってんだろ、馬鹿」

何当たり前のこと聞いてんだ。

「ねぇ、ジュリス」

「あん?」

「私もね、さっきからこの子の犬歯がチクチク当たって、痛い」

「我慢しろ、そのくらい」

俺は背中に弓矢二本、胸はケルベロスの爪で引き裂かれたんだぞ。

犬歯チクチクが何だ。

「あとね、ジュリス。もう一個言って良い?」

「あぁ?まだなんかあんのかよ」

「ジュリスがね、さっきそこでじっとしてろって言うから、じっとしてたけど」

そのとき。

驚くべきことが起きた。

ベリクリーデを咥えていたケルベロスの真ん中の首が、風船みたいに膨らんで。

風船みたいに、バチンと弾けた。

「ジュリスが苦しそうな顔してるから、我慢出来ない」

「…」

しゅたっ、と俺の横に降りてきたベリクリーデは。

相も変わらず、けろっとして俺にそう言った。
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