神殺しのクロノスタシス2
「おはようございまーす!」

「…!?ぎゃぁぁぁっ!」

爽やかな挨拶と共に、これまた顔も爽やかなイケメン教師(人の心を勝手に読む悪癖持ち)が、学院長室に入ってきた。

今日は珍しく、帽子を被ってやって来た。

ちょっと寒くなってきたもんな。最近。

それにしても。

おいおい学院長、折角、数少ない教師が朝から爽やかに挨拶しに来てくれたというのに。

その挨拶を返すどころか、ぎゃーと叫ぶとは。

「挨拶は大事だよ。三時のおやつと同じくらい大事」と生徒達に教え説いている奴が。

他人様の挨拶に、叫び声で返すとは。

…しかし。

シルナが叫ぶ、その理由は分かる。

実は俺もさっき、ちょっと「うわっ」て思った。

「…ナジュ」

「はい」

「腸出てるぞ」

「え、そうですか?…あ、本当だ」

ナジュの、引き裂かれた腹部から。

ぷらーん、と腸が飛び出していた。

正直に言おう。

グロい。

「腸はちゃんとしまっとけよ」

「済みません、つい勝手に小腸が」

つい勝手に小腸が出るなんてことがあるか?

「ぐねぐねしてるんで、しまいにくくて…。はいっ、もう大丈夫ですよ」

などと言いながら、自分の小腸を掴み、腹の中にぎゅうぎゅう押し込む。

そんな適当なしまい方で良いのか。

「うぅ…。ピンク…ピンク色だった…」

朝から内臓を見せられ、ぷるぷると震えているシルナ。

気持ちは分かる。

「もうしまったから、大丈夫ですよ」

「え、そう?じゃあ…」

シルナが顔を上げると、ナジュは。

待ってましたとばかりに、帽子を取った。

「実は左脳がまだ治ってなくて」

「ぎゃぁぁぁっ!」

半ペースト状になった脳みそが、ナジュの頭から露出していた。

正直に言おう。

グロい。

「何なんだよお前は…」

学校に来るなら、内臓くらい治してから来い。

何が嬉しくて、朝から小腸と左脳を見せつけられなきゃならないんだ。

「いやぁ、先日の戦いでボロボロにやられたもんですから、修復に時間がかかっちゃって」

「あ、そう…」

とりあえず、両手両足は治ったんだな。

胴体も繋がってるし。

小腸出てるけど。

「実はまだ、指が四本だったりします」

「いちいち見せなくて良い。ってか、キモいからちゃんと治してから来いよ!」

万が一生徒が見ちゃったら、どうするんだ。

一生モノのトラウマだぞ。

「脳みそ…脳みそ…腸…」

見てみろ、そこの学院長を。

朝からグロテスクなものを見せられて、半泣きじゃないか。

お前もしかして、シルナのこの反応を見たくて、わざわざ治りを遅くしてないか?

「失礼ですね。僕だって不死身とはいえ、一瞬で治る訳じゃないんですよ」

勝手に人の心を読む悪癖は、ちゃんと治ったようだな。

何よりだよ、全く。
< 579 / 742 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop