あの場所へ

2.図書室

部活の仲間には,
最近付き合いがわるくなったのは
女でもできたんじゃないか,

なんて冷やかされながら,
もう日課になりつつある
図書室へ向かった。


しかし,
いつもの場所に七海はいなかった。


荷物があるのに・・・
本でも探しにいったのか。
俺は書庫の間を
あちこち覗き込みながら
七海を探していた。




「門倉さん。
 俺と付き合ってくんない。」



奥から,男の声が聞こえた。
俺は慌てて声のするほうへ急ぐと

ちょうど図書室の書庫の一番奥の隅で
2組の奴が七海に告白し迫っていた。


七海は書庫と壁に挟まれて,
もう逃げることもできず,
顔面蒼白になって,

「困ります。こんなの。」

と言うと,顔を背けた。
                                        「そんな純情ぶって,
なあ,俺とkissくらい出来るだろう。
お前の家って水商売やろ,
お前もあのお袋と一緒に男なんて…」

そいつが七海の顔に
手を持っていこうとしたときだった。


俺は,そいつの肩に手を置いて,
身体の向きを変えると
思い切り右の頬にパンチを見舞わした。
そいつはそのままぶっ倒れて気を失っていた。



七海は突然のことに声もでず,
口の手を当てて,
目には涙をいっぱいためて
立ちすくんでいた。

俺は,七海の手をとると,
そこから連れ出し,荷物をまとめて
図書室からでた。

七海の手はずっと震えて,
今にも涙は目から溢れてきそうだった。

周りのざわざわした声なんて,
何も聞こえなかった。


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