花隠し
「けどダメだった。私の手には及ばなかった」
「……ダメなんかじゃねぇよ。お前という存在だけで、一時的でも実里の心は救われたはずだ」
「ダメだよ。命が救えなきゃ意味ない。私、いつもこうなんだ。騒ぐだけ騒いで、結局はなにもできない」
憎しみの他に、肩を並べて私を苛んでいるのは、どうしようもない自己嫌悪だった。
「私ね……たまに思うんだ」
「うん?」
守助にすら言ったことのない、心の奥底。
「私の命と引き換えに、みんなみんな、助かればいいのにって」
涙がポロッとこぼれる。
拭う間もなく、次から次へと流れ落ちてくる。
琉平は悔しげに顔を歪めると、その手を抜き取り、迷いなく私を抱きしめた。
生まれ落ちた世界で必死に抗う私の命。
それすら恨めしく思ってしまうほど、無力な自分が情けなかった。
「菫……今はもう、なにも考えなくていい」
「……うん」
「おまえはなにも悪くない」
「……」
「綺麗だよ、菫」
「きれい、なんかじゃ」
「ううん。強くて気高いおまえは、この世で一番綺麗だ」
花の蜜をおもわせる蕩けた瞳。
それが私だけを映し、閉じこめている。
こんな私を綺麗だと言う琉平は、私の涙が枯れるまでずっとずっと離れなかった。


