国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「大儀であった」

ニーナとフェルディナンドが皇帝に謁見すると、彼は実に満足そうだった。

ニーナは目だけで周囲を見渡す。
今日は大広間ではなく、小さな個室に通された。
内密な話がしやすいようにという皇帝の配慮だろう。

(外には皇帝陛下直属の騎士たちが立っていたし、ここなら安全に話が出来そうね)

「被害の拡大を抑え、被害者は最小限。死者はなし。大賢者の名に恥じぬ成果だ」
「まだ予断を許さぬ状況です。治療法は確立しましたが、肝心の原因調査が進んでおりません」

フェルディナンドが報告書を渡すと、皇帝は眉をひそめた。

「ふむ……原因か。しかし大方の予測はついているのだろう?」
「はい。森の瘴気を発生させた時と同じでしょう。今回の件、ルティシアの王子アレクサンドロスが関与しているのは間違いありません」

皇帝は口元だけに笑みを浮かべた。

「随分と余裕がないのだろうな。内容がお粗末だ。だがフェルディナンドの報告書を読むに、これはルティシアからの宣戦布告だ。我々は帝国全土を守らねばならないからして……」

皇帝はおもむろにニーナを見た。
そして面白そうにニーナに言葉を投げかけたのだ。

「ルティシアの元聖女はどのように考える? 何か言いたげだな」

急に話を振られたニーナは一瞬言葉に詰まったが、正直な気持ちを口にした。

「国同士の交渉に口を出すつもりはありません。ただ、ルティシアの民には寛大なご配慮を賜りたく存じます」
「ほぉ? さすがは元聖女だ。聖職者のお手本のようなことを言う」
「今回の件、王子の暴走なのです。民に罪はありません」

ニーナの言葉に皇帝は声を出して笑った。
その声は背筋が凍るほど冷え切っていた。




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