he said , she said[完結編]
「兄妹で料理人になるって、血筋ですかね。二人とも自分のお店を持つなんてすごいですね」
瞳子はいたく感じ入った様子で、品書きを見る目にも熱がこもっている。

厚紙に和紙を貼っただけの手書きの品書きで、メニューも数種類だけだ。
食材にこだわり、定番の和食にひとひねり加えた料理が売りだという。

「この梅香(うめかお)る親子丼、ってどんな味か気になりますね」

品書きを二人で覗きこむので、自然と顔を寄せることになる。瞳子は距離を取ろうとはしなかった。

「それ、僕も気になりました。同じのにしましょうか、店の人もそのほうが楽だし」

「そうですよね、一人ですものね」
ちらりとキッチンに目を向ける。

察しがよく気配りができる。
一緒にいて心地がいい、そんな言葉が心に浮かんだ。

やがて運ばれてきた膳は、期待を裏切らない味わいだった。
いわゆる親子丼に、大胆に料理人のアレンジが施されている。
卵白をメレンゲにして熱を加えたのか、卵は口に入れるとふわふわほろほろと口の中で溶ける。
香ばしく焼き目をつけた鶏肉に、梅の香りで炊いた白米との相性が絶妙だった。

付け合わせもまた洒落ている。
一見とうもろこしの白和(しらあ)えかと思いきや、口に入れると豆腐ではなくカッテージチーズという小さな驚きに出会う。
それでいて風味づけはかつお節と、さらに意表をついてくる。
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