he said , she said[完結編]
自分の祖父は宮大工を生業(なりわい)にしていたと、珍しく瞳子は自分から話してくれた。
暮林家は今も祖父が建てた日本家屋に住んでいるのだと。

「へえ、ぜひ見てみたいな」
興味をそそられる。

「あ、いえそんな立派なものじゃなくて、ただの一軒家ですよ。数寄屋(すきや)造りっていうらしいですけど。
夏は涼しいけど、冬はそれは寒くて、住みづらいところもあって…」

瞳子には “モノ作り” の血筋が流れているようだ。そして祖父の作った家で暮らすなかで、感性も育まれたのだろう。
彼女を形成する一端が垣間見えた気がした。

そして直弥は、そんな彼女が喜ぶであろう場所に導き入れる。
オーナーがヨーロッパ各地を回り、陶芸家と直接契約して仕入れているというセレクトショップだ。
ここでしか手に入らないという一点物の陶磁器がところせましと並んでいる。

直弥のインテリア探しにかこつけたが、瞳子は狙いどおり目を輝かせた。
「わぁ」と小さく感嘆の息をもらす。

そんな彼女に、ゆっくり見ようよと声をかけて、別行動に移る。
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