he said , she said[完結編]
面接官に「呉興自動車さんもああなっちゃったからねえ」とか半笑いで言われて。

なんであんたみたいな中小企業のおじさんにうちの会社のこと…ってイラッとしては、もううちの会社は無いし、わたしは呉興をクビになったんだと苦く噛みしめた。
アイデンティティまで無くしかけて、必死で自分で別の転職エージェントに登録して、株式会社サカキに行き着いたというわけ。

建設機械メーカーだから、前職の自動車関連と遠からずということで紹介してもらったの。
いくら建設機械メーカーの分野では日本有数とか、創業何十年の優良企業といわれても、ショベルカーやブルドーザーのメーカーって一般にはほとんど知られてない。
呉興に比べるとそりゃ地味な会社だけど。

もう贅沢も言ってられないし、営業事務職で内定が出たから、わたしはサカキに再就職したの。
ちなみにこの業界の最大手は米国キャタピラー社。そうキャタピラーって普通名詞じゃなくて、キャタピラー社の登録商標なのよ。
キャタピラーは正しくは日本語では無限軌道、もしくは履帯(りたい)などと表現します。
こんな知識を一つ一つ覚えるところから、サカキでの仕事は始まったわ。

営業事務って、新人のうちは苦情受付係みたいなもので、一生分怒鳴られたんじゃないかしら。
なんの権限もないのに、お客様からの電話を取り続けないといけないわけだから。
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