エリートなあなた


そうして現在、桜のつぼみが開花し始めた春。気になるのは3月中に行なわれる人事異動だったり、4月に入社する新人の配属先。


――もちろん滅多に異動のない秘書課では、専ら話題は新人が参入するかであった。


「絵美さん、今年度は採用枠が増えるんですか?」

「うーん、…そうねえ。多分ね、」

給湯室でコーヒーを飲みながらの休憩中。気になって尋ねてみれば、何とも歯切れの悪い言葉が。


明朗快活な彼女にしては珍しい。…去年はすでにこの時点で、私の採用決定を聞きつけて秘書課内でバラしたと伺っているのに。


「あ、電話――ゴメン先に行くね」

「はい分かりました」

すると着信が入った絵美さんは、プラスチックのカップを捨てて給湯室を先にあとにした。


ちょうど休憩終わりだったこともあって、私も容器をゴミ箱へ捨ててその部屋を出る。


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