エリートなあなた


秘書室へ戻る前に化粧室へ寄るため、秘書課をまっすぐ通りすぎてつきあたりのトイレにひとり向かっていた時。


「ちょっと修平!」

このフロアには似つかわしくない怒りに満ちた声音が響き、思わず足が止まってしまう。


聞こえたのは役員室へと繋がっている、トイレの向こうにある階段の方からであった。



「どういうことよ!?」


普段は秘書室のすぐ傍にあるエレベーターの方が楽だから、とあまり使われていないスペース。


そこから聞こえたのは、絵美さんの声。そしてさっきの名前って…。



「絵美さん…、頼むからそんなに怒らないで欲しいんだけど」

「修平!」


もう一度、彼女が呼んだ名前ともうひとつの声音にビクリとしてしまった。


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