エリートなあなた
あとは専務への書類を届けたりお茶を出す際、専務と談話中の課長と出くわす場面も数回あった。
そこで挨拶を交わしたりしたけれど、所詮は別部署の新人への対応として相応なもの。
外見だけでなく仕事面でもすこぶる評価されている彼に、憧れている女性は山ほどいる。
ただ……独身エリートとなれば積極的にアタックしてもおかしくないのに、なぜか告白する勇気のある人は皆無だった。
“絵美さんと課長は付き合ってるって専らのウワサ”
その疑問をアッサリと解いてくれたのは、秘書課イチお喋りな先輩のひと言だった。
背の高い絵美さんと黒岩課長が並ぶと、まさに美男美女――歩く姿も絵になる2人は、プライベートでも“親密”らしいと。
――そうだ、私も憧れを恋とカン違いしただけ。事実を知ってビックリしたのよ。
まだ戻らない絵美さんの席を、チラリと一瞥していたのは不可抗力として。
いつしかスリープで真っ暗になっていたPC画面をクリックし、ようやく資料作成を再開した。