エリートなあなた
カタカタと必要以上に音が鳴るのは、タイプする指に必然と力が入ってしまうから。
無機質な画面への文字入力が今日ラストの業務で、本当に救われた。
今日は絵美さんについてのサポートが上手く出来そうもないから……。
上手く笑うことも出来ない――そこでピタリ、とタイピング作業する指を止めていた。
“どうして今、そんなことを考えてしまったのだろう…?”と。我に返ってみれば、今度は自己嫌悪に見舞われる。
これだとまるで私が、…黒岩課長を好きみたい?――そんなことあり得ないのに。
小会議室での一件から、この半年間で黒岩課長が秘書課へ訪れることはよくあったけれど。
もちろん新人の私に用事はなくて、いつも絵美さんと秘書室の奥にある談話スペースで打合せ。
もしくは黒岩課長から連絡が入って、彼の所属する試作部まで絵美さんが向かったりするだけのこと。