エリートなあなた


イルカショーがあると聞いた私は彼にお願いし、イルカプールのブースへと向かった。



館内入口すぐの水中観察窓で泳ぐ姿は見られるけれど、やっぱりショーは外せない。



アクアブルーに映るプールで泳ぐイルカ数頭の姿は、大人が見ても騒いでしまうものだ。



すでに開演間際だったのでとても混雑していたけれど。上段の隅2席が空いていて、運良く座れたと笑い合った。




「あーもう!イルカショーすごく楽しみ!」


「…ああ、俺も久々なんだよな――

あ、今のうちに喉渇いたから何か買って来る。席は頼んだよ、」


立ち上がった彼に慌てて、「それなら私が、」と告げれば手で制されてしまう。



「もうすぐ開演じゃん。真帆は折角のチャンスだからしっかり見てて?」


柔らかい笑みもプラスされると何も言えず、そのまま彼は席を離れて行った。



ひとり取り残された瞬間――ガクッと項垂れてしまう。



今まで“やって貰う”ことが、当たり前だったこと気づいたためだ。



どれだけ気の利かない女なんだろう?――今さらだけれどダメだなぁ…。



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