エリートなあなた
修平さんが席を立って暫くすると、トレーナーさんの明るい声でショーがスタートした。
何匹ものバンドウイルカが見せてくれる、多彩な芸と高いジャンプ。
その素晴らしさで周りからは歓声が漏れているのに、私だけひとり嘆息したい気分だった。
「…気分でも悪い?」
あちらこちらで歓声が沸き起こる中、ふと届いたその声に小さく顔を上げた私。
戻って来た彼の手はジュース2本で塞がれており、ひとつを差し出されて受け取る。
同時に心配そうな視線まで向けられてしまい、ますます居た堪れない気分アップだ。
「真帆どうした?」と尋ねながら彼は、空いている私の左隣の席へと座る。
「あ、ううん!…その、ごめんね?疲れてたのに買いに行かせたり、」
左右へ頭を振ってから、隠しきれないだろうと素直に謝ることにした。…彼女失格だよ、本当に。
するとドアをノックするように、コツンと頭に触れてくる彼。
「真帆、そんな事気にしてたのか?」
「…だって、」
どこか呆れている彼を見て、言葉に詰まってしまった。
まったく痛みがないのに、触れられた左のあたりをおでこを押さえてしまう。