エリートなあなた


一時期、よく秘書課を訪れていた彼を見かけない頃があったかもしれない。




当時の私は秘書課に在籍していて、彼の言葉を胸に仕事への姿勢がやっと前向きに変われた頃。



『ちょっとだけ、バタバタしてたかな?』と、その当時から彼は真実を伏せていたんだ。



私がくだらないことで悩んでいた時こそ、彼は人知れず葛藤していたのに。



エリートと呼ばれる彼ゆえに自分への厳しさもあったとは思うけれど…。



「でも、その時出した結論は今でも間違っていないと思う。

本社や日本支社の一部からは色々と言われたけど、やっぱり日本に残って良かったよ。

新たな気持ちで臨んだ構造課のメンバーのお陰で、試作部の弱点だった所が強みに変わって、会社の発展へと繋がっているのは紛れもない事実だから。

同時に俺もまた、新しい発見を手に入れられたからね」


躊躇いがちに彼を見ると、“本当”だと告げている表情で微笑みかけてくれた。



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