エリートなあなた
心に秘めて



その後1ヶ月も経たないうちに――本社へ修平さんが出向する旨が正式発表された。



事前に準備を始めていたため、結局のところ発表してから2週間ほどで発つ予定である。



本当にアメリカへ行ってしまう、…私の目の前からいなくなるのだと。社内で話題に上るたび心がチクチク痛んだ。



だけれど私に出来るのは、さらなる棘(いばら)の道へ進んでいく彼を一番に応援する人であること。



そして私も彼に負けないように、目の前の仕事を頑張ろうと自身に喝を入れるだけであった…。





「――それじゃあ、黒岩君から皆に一言挨拶を、」


「はい、」


伊藤試作部統括部長の呼びかけに、返事をしてスッと一歩前へ出てきた課長。



今日は瞳と同じ色のダークグレイのスーツに、光沢感のあるシルバーのネクタイを合わせている。



これは私が最も好きなスーツスタイルで、最後の日に着て欲しいとリクエストしていたのだ。



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