エリートなあなた
カチャリ、と音を立ててドアノブを回す。小会議室ほどの広さの室内は、ガラス書庫と書棚で埋め尽くされていて殺風景だ。
小さな白テーブル上に持って来た箱を置く。そしてドアを閉めれば、室内に立ちこめる古びた紙の匂いが鼻腔をついた。
持ち込んだファイルをすべて取り出し、それぞれ所定の位置へ返していく。
秘書課に配属された時は辞めたい、…なんて図々しい悪態をついていたのに。
いざ異動するとなると――居心地の良かった職場を離れがたくなっている。
それは紛れもなく、秘書課の主任である絵美さんの存在が大きかった。
多忙なことは億尾にも出さず、いつも笑顔で逆境を吹き飛ばす背中に学んでいるから。
彼女の姿は秘書課のボルテージを上げているし、現に私を辞めずに留まらせてくれた人でもある。
仕事が出来る人は向上心が強く、自身を常に高めようとしているから厳しい――
私は彼女と出会えたことで、仕事における研鑽を積むことの意味が少しだけ分かった気がする。