エリートなあなた


オフィス最上階の全面ガラスから臨む景色は、何度見ても都会を一望出来て素晴らしい。



荷物を手にしながら、見納めの光景を眺めて役員室の連なる廊下を歩いていく。



資料室は秘書課の階にあるため、専務室に近いエレベーターを使用。一旦、箱を下ろしてからエレベーターを呼ぶボタンを押した。



さほど待たずして到着し、「よっ、と」なんて声を出しながら箱を持つと、急いでそれに乗り込んだ。



ひとり言をぶつぶつ呟いていた絵美さん。彼氏への不満を漏らす可愛らしさの半面、事実を目の当たりにして辛くもなる…。



誰ひとりいない空間を楽しむ気になれぬまま、高速エレベーターは1階下へと送り届けてくれた。



エレベーターを降りてそのまま真っ直ぐ進むと、つきあたりに秘書課専用の資料室がある。



また手を塞ぐ箱を下へ置き、制服のポケットに入れてあるキーを取り出した。



ここは役員会等で使用した、いわば重要書類類の保管庫である。


整理整頓も大事な仕事のひとつ――そのため勤務中は、私が鍵の管理担当だった。


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