エリートなあなた
会社のすぐ側にこんなに美味しくてお洒落なお店があったんだ、と感動さえするほど。
湯気に引き寄せられるようにして、切り分けては何度も口いっぱいに満たしていた。
こんな時でも食欲が沸くとは、肝心な時に限って何とも能天気らしい。
「――ああ言っておけば、しばらく静かに過ごせるでしょ?」
と、早くもお皿いっぱいの大きさのガレットを完食していた松岡さんの声が届く。
「…知っていらっしゃるんですか」
「うん、まあちょっとねぇ」
咀嚼しながらチラリと隣を見れば、次にのんびりコーヒーを嗜んでいる彼。
「でも、…松岡さんは彼女がみえるのに」
カチャリ、と音を立ててカトラリーを皿の上へ沈める。声も同時に小さくなってしまう。
「なに?早くも俺に惚れちゃった?」
「――それは断じてあり得ません」
「あれ、勘違い?」
眉根が寄ってしまったものの、軽快に笑っている彼にはどうでも良いことのようだ。