エリートなあなた
試作部の忙しさは社内随一、とウワサでは聞いていたけど。
それを実感する毎日はまさに、息つく間もなくあっという間にすぎていた。
通勤途中に肌をくすぐる風の冷たさだけが、1年という変化を私に教えてくれていたほどに…。
「…この携帯美顔器を完成させるにあたりまして、いかにローラー部分と肌とを優しく密着させ、素早く成分を行き渡らせるのかが最大のポイントでした。
ターゲットとなる30代以降の女性にも広く受け入れられると考えております。
――以上となりますが、ご質問等はよろしいでしょうか?」
試作部のある20階では、もっとも広い会議室が今日は人口過多で狭く感じる。
というのも、午後から部署メンバーが招集されて全体会議が行なわれているためだ。
静まり返る室内に、はつらつとした声を響き渡らせていたマイクを置いて。
一礼した人物は次の発表者とバトンタッチしたあと、颯爽とこちらへ戻って来る。
薄明りの中でもスタスタ歩いて来ると、今までひとつ空いていた席へと静かに座った。
「お疲れさまです、…松岡さん」
「うーん、真帆ちゃんも」
次のグループの発表がもう始まっているため、小さな声で迎えるとやはりお疲れモードだ。