早河シリーズ第三幕【堕天使】
松濤地区に入ると紫色に染まる空を背景にそびえる樋口邸が見えた。祥一のいない今、あの家は自分の帰る家ではない。今も、これからも。
憂鬱な気分を抱えて樋口邸に帰宅する。玄関に俊哉の仕事用の靴が置いてあった。
「トメさん、俊哉お兄さん帰ってるの?」
「はい。今しがたご帰宅されましたよ」
出迎えのトメに俊哉の帰宅を聞いた莉央は俊哉の部屋に向かった。深呼吸を繰り返して扉をノックする。彼はすぐに開けた扉から現れた。
『今帰ったのか。どうした?』
「話があるんだけど……」
制服姿のまま、カバンの持ち手を握りしめる莉央の仕草に気付いた俊哉は莉央を部屋に入れた。
俊哉もまだ仕事着のスーツだ。彼はワイシャツの袖をめくり、腕時計を外した。
そうやってスーツを着ていると俊哉はうんと年上の男に見えて、大人の雰囲気を醸し出す彼にドキッとした。
『大事な話?』
「来月、三者面談があるの」
莉央は三者面談の日程表を俊哉に渡した。スーツのネクタイをほどきながら彼は日程表に目を通す。
『俺に来てほしいってこと?』
莉央が頷いた。俊哉は自分のスケジュール帳を開いて三者面談の日程と照らし合わせる。
『わかった。行ってやるよ』
「いいの?」
『俺しか頼めないんだろ? 母さんも兄貴も嫌がりそうだもんな』
「お仕事は……」
『夕方なら大丈夫。莉央のためならそれくらいの時間は作る。母さんには俺から言っておくよ』
俊哉に優しく頭を撫でられる感覚が心地いい。
「ありがとう」
『俺は莉央にはとことん甘いんだよ』
自然に唇が触れて抱き締められる。相澤と一緒にいる時には感じないものがここには存在していた。
上目遣いに彼を見上げる。熱っぽい眼差しの俊哉と莉央は見つめ合った。
『今日はやけに積極的に甘えてくるなぁ。俺と何したい?』
「……キスしたい」
『キスだけでいいの?』
「もう。バカ……」
また、二人はキスをする。
ついばむキスから次第に深く、長く、甘く。延々と永遠を感じるキスをした。
それを愛だと認めてしまうには莉央はあまりにも不器用で幼かった。
離れられないのは兄と妹のどちらなの?
憂鬱な気分を抱えて樋口邸に帰宅する。玄関に俊哉の仕事用の靴が置いてあった。
「トメさん、俊哉お兄さん帰ってるの?」
「はい。今しがたご帰宅されましたよ」
出迎えのトメに俊哉の帰宅を聞いた莉央は俊哉の部屋に向かった。深呼吸を繰り返して扉をノックする。彼はすぐに開けた扉から現れた。
『今帰ったのか。どうした?』
「話があるんだけど……」
制服姿のまま、カバンの持ち手を握りしめる莉央の仕草に気付いた俊哉は莉央を部屋に入れた。
俊哉もまだ仕事着のスーツだ。彼はワイシャツの袖をめくり、腕時計を外した。
そうやってスーツを着ていると俊哉はうんと年上の男に見えて、大人の雰囲気を醸し出す彼にドキッとした。
『大事な話?』
「来月、三者面談があるの」
莉央は三者面談の日程表を俊哉に渡した。スーツのネクタイをほどきながら彼は日程表に目を通す。
『俺に来てほしいってこと?』
莉央が頷いた。俊哉は自分のスケジュール帳を開いて三者面談の日程と照らし合わせる。
『わかった。行ってやるよ』
「いいの?」
『俺しか頼めないんだろ? 母さんも兄貴も嫌がりそうだもんな』
「お仕事は……」
『夕方なら大丈夫。莉央のためならそれくらいの時間は作る。母さんには俺から言っておくよ』
俊哉に優しく頭を撫でられる感覚が心地いい。
「ありがとう」
『俺は莉央にはとことん甘いんだよ』
自然に唇が触れて抱き締められる。相澤と一緒にいる時には感じないものがここには存在していた。
上目遣いに彼を見上げる。熱っぽい眼差しの俊哉と莉央は見つめ合った。
『今日はやけに積極的に甘えてくるなぁ。俺と何したい?』
「……キスしたい」
『キスだけでいいの?』
「もう。バカ……」
また、二人はキスをする。
ついばむキスから次第に深く、長く、甘く。延々と永遠を感じるキスをした。
それを愛だと認めてしまうには莉央はあまりにも不器用で幼かった。
離れられないのは兄と妹のどちらなの?