無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】

別れ

 真紘の姿を視界に入れた瞬間、世界が暗闇に包まれた気がした。それほどの衝撃だった。

「おまえは一体誰なんだ?」

 どうして真紘がここにいるんだろうなんて疑問は、一瞬にして消え去った。
 冷たく問われ、由惟は全てを察する。ついに、己の正体がバレてしまったのだ。
 
 恐らく藤野との会話を聞かれていたんだろう。まさかこんな形で知られてしまうとは思わなかった。
 何か言おうと口を開くも、喉が張り付いてしまったように声が出せない。黙りこくる由惟に苛立ったのか、真紘が舌打ちをした。

「答えろよ。おまえは生田目穂乃花じゃないんだろ。おまえは何者だ?何が目的で俺に近づいた?」

 逃げることは許さないと訴える強い眼差しに射貫かれ、由惟はたじろいだ。

「わた、私は……私の本当の名前は……奥村、由惟と言います……生田目病院とはなんの関わりもない人間で……」
 
 由惟は震える声で全てを白状した。
 なぜ素性を偽っていたのか。なぜ穂乃花のふりをして真紘のそばにいたのか。
 話している間、真紘の顔を見ることはできなかった。
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