無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
「……お金は、両親の遺産があったはずです。それに私が会社で働いていた分のお給料だって……」
「あんな端金、なんの足しにもなりゃしないよ。おまえの給料だってそうだ。愚図のおまえを情けで雇ってやっただけでマイナスなのに、金なんて払えるわけないだろう!」

 彼らの言っていることはめちゃくちゃだ。自分たちを正当化するために、道理に合わないことを並べ立てている。
 あまりの理不尽さに由惟は歯噛みした。静子たちを睨んで反抗を示すと、静子が顎をそびやかし、虫けらでも見るように目を細めた。

「なんだい、その目は。どうやら自分の立場がわかっていないみたいだね」

 静子が再び腕を振りかざす。
 また叩かれる。由惟が身を固くして痛みに備えた時、「まあまあ、静子。やめないか」と横井が静子を諌めた。

「由惟にはこれから誠心誠意、我が家のために働いてもらうんだ。少しくらい生意気でも目をつぶろうじゃないか。あと十年もしたら従順になっているさ」

 ゾッとした。また十年――いや、それ以上の長い期間を、この薄暗い家で囚われることになるんだろうか。
 愕然とする由惟を嘲笑うように、横井は笑みを深めた。
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