無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
波乱の幕開け
もらい事故のようなお見合いから一ヶ月が過ぎた今日。
由惟はボストンバックを肩から下げ、両親の形見の裁縫箱を両手で抱えながら、感慨深い気持ちで駅近くのマンションを見上げていた。
周辺エリアで一番高級らしいこのマンションは、その佇まいだけできらびやかな気配を漂わせている。東京ではないので芸能人はさすがに住んでいないだろうが、周辺のちんまりとした建物とは明らかに一線を画していた。
ここは、成澤真紘が住むマンションだ。
結局穂乃花は戻って来ることなく、代わりに由惟が今日からここに住む。
みどりから連絡を受けた時は、正直戸惑った。もう横井家から出て行く算段はつけていたのだ。穂乃花の代わりであっても、男の人と一緒に住むことに抵抗もあった。
だから一度は断ったのだが、報酬として五百万円を支払うと言われ決意が揺らぎ、さらには半年後に由惟が望むなら正社員の仕事を紹介すると提案され、とうとう由惟は屈服した。お金には抗えない。
『穂乃花のことは気にせず、成澤くんと仲良くなってね』
みどりはそう言っていたが、所詮由惟は替え玉にすぎない。同居期間が終われば、真紘は穂乃花と結婚する。真紘とは節度ある距離を保つべきだろう。
それに上手く立ち回れば、この同居期間で穂乃花に対する真紘の印象を変えることができるかもしれない。びっくりするほどの大金に加えて、仕事も紹介してもらえるのだ。報酬に見合った働きをするのは当然である。 ホテルのような豪華なエントランスに足を踏み入れると、真紘の母が由惟を迎えてくれた。真紘は仕事に行っていて、由惟の引っ越しには立ち会わないらしい。
「こんな大事な日にも仕事を休めないなんて。本当にごめんなさいね、穂乃花さん」
と、息子の愚痴をこぼす真紘の母に部屋を案内してもらった。由惟が住むための準備は、真紘が雇っているハウスキーパーがしてくれたらしい。由惟の部屋まで用意してあったのだから驚いた。
元は物置だったらしいが、綺麗に整頓されセンスの良い木製の家具で統一されている素敵な部屋だった。カーテンの隙間からは昼下がりの眩しい光が生き生きと飛び出していて、新しい生活への期待で由惟の心も弾む。
由惟はボストンバックを肩から下げ、両親の形見の裁縫箱を両手で抱えながら、感慨深い気持ちで駅近くのマンションを見上げていた。
周辺エリアで一番高級らしいこのマンションは、その佇まいだけできらびやかな気配を漂わせている。東京ではないので芸能人はさすがに住んでいないだろうが、周辺のちんまりとした建物とは明らかに一線を画していた。
ここは、成澤真紘が住むマンションだ。
結局穂乃花は戻って来ることなく、代わりに由惟が今日からここに住む。
みどりから連絡を受けた時は、正直戸惑った。もう横井家から出て行く算段はつけていたのだ。穂乃花の代わりであっても、男の人と一緒に住むことに抵抗もあった。
だから一度は断ったのだが、報酬として五百万円を支払うと言われ決意が揺らぎ、さらには半年後に由惟が望むなら正社員の仕事を紹介すると提案され、とうとう由惟は屈服した。お金には抗えない。
『穂乃花のことは気にせず、成澤くんと仲良くなってね』
みどりはそう言っていたが、所詮由惟は替え玉にすぎない。同居期間が終われば、真紘は穂乃花と結婚する。真紘とは節度ある距離を保つべきだろう。
それに上手く立ち回れば、この同居期間で穂乃花に対する真紘の印象を変えることができるかもしれない。びっくりするほどの大金に加えて、仕事も紹介してもらえるのだ。報酬に見合った働きをするのは当然である。 ホテルのような豪華なエントランスに足を踏み入れると、真紘の母が由惟を迎えてくれた。真紘は仕事に行っていて、由惟の引っ越しには立ち会わないらしい。
「こんな大事な日にも仕事を休めないなんて。本当にごめんなさいね、穂乃花さん」
と、息子の愚痴をこぼす真紘の母に部屋を案内してもらった。由惟が住むための準備は、真紘が雇っているハウスキーパーがしてくれたらしい。由惟の部屋まで用意してあったのだから驚いた。
元は物置だったらしいが、綺麗に整頓されセンスの良い木製の家具で統一されている素敵な部屋だった。カーテンの隙間からは昼下がりの眩しい光が生き生きと飛び出していて、新しい生活への期待で由惟の心も弾む。