無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
「どうしてそんなに私を拒絶するんですか?あの話は誤解だって、言いましたよね?」
「証拠は?根拠も示さないで信用させられると思うなよ」
「あなたこそ自分で確かめる努力をした方がいいんじゃないですか?誰かから吹き込まれたホラ話を鵜呑みにしてないで、目の前の人間を見たらどうです?」

 すると真紘が不愉快そうに顔を歪めた。
 瞬間、由惟は自らの失言を悟った。焚き付けたのは自分だが、誰が見ても怒っているとわかるその表情は恐ろしい。

 もしかしたら殴られるかもしれない。
 真紘がこちらに向かって一歩距離を詰めてきて、由惟は本能的に後ずさった。だが廊下はさほど広くない。すぐに行き止まり、背中が壁に貼り付いてしまう。

 上から降ってくる突き刺すような視線が痛い。
 ふいに真紘が手を伸ばしてきた。殴られる――やってくるであろう痛みに、由惟は目をつぶった。

 だが、いつまでたっても衝撃はやってこなかった。代わりに顎を掬われ、思いのほか優しい手つきで上を向かされる。

「おまえは一体、何がしたいんだ?何が目的だ?」
「何って……私はただ、成澤さんと打ち解けられたらと思って……せっかく、家族になるんだし……」

 おかしなことは言っていないはず。由惟が真紘と距離を縮めることで、穂乃花の印象を好転させたいという目論みはあるが。

 なのにニヤリと笑う真紘に嫌な予感がした。端正な顔が間近に迫ってきて、思わず息を詰める。鼓動がうるさい。

「家族、ねぇ」
「な、なんですか……」
「確かに夫婦になるなら、それなり打ち解けないとな。跡継ぎは必要だし、寛二先生とみどりさんも孫は見たいだろ」

 唐突に生田目夫妻の名前が出て戸惑う。「まご」ってなんだっけ。
 頭が困惑する中、唇に温かいものが触れた。柔らかくて、少し湿っていて。

(えっ、えっ……?)

 視界が肌色で埋め尽くされている。高い鼻筋から作り出された陰影と、閉じた瞳を縁取る長いまつ毛の黒のコントラストが美しい。
 けどこれは――
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