無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
 真紘はずっと由惟を慰めるように目元や頬に口付けを落としてくれている。

「無理しなくていい。今日は何もしない」

 由惟を慮ろうとしてくれている優しい声音に、胸が切なく締め付けられた。

「違うの……嫌じゃないの……怖くないの……」

 決して彼を拒絶したいわけではないことを分かってほしくて、由惟は髪が振り乱れるのも構わず何度も首を横に振った。

 怖がっているなんて思ってほしくない。自分の言動で彼を傷つけてしまうのは絶対に嫌だ。
 でも、彼は穂乃花の婚約者で、由惟が手を伸ばしてはいけない人で――由惟が人生で初めて好きになった、世界で一番好きな人だった。

 泣きすぎてぼうっとした頭ではグルグルと思考が空転するばかりで、考えがまとまらない。だんだん何が正しいのかもわからなくなってくる。

 ソファに押し倒され、そのまま深く口付けられる。拒むことなんてできなかった。
 真紘の首に腕を回し、ギュッとしがみつくと、隙間がなくなるくらい強く抱きしめ返された。

(好き、好きなの……)

 それだけが頭を占める。もう何も考えられない。
 由惟は与えられる熱に溺れていった。
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