早河シリーズ第四幕【紫陽花】
メイクルームのプレートには本庄玲夏様と書いてある。間違いなく玲夏のメイクルームだ。
「ありがとうございました」
『ここ、なぎさちゃんが迷い込んでいた所から近かったんだよ。なぎさちゃんって方向音痴だなぁ。探偵の助手って聞いてたからもっと凄腕のSPみたいな女を想像してた』
蓮が笑っている。さっきから彼に笑われてばかりだ。
「だってテレビ局って広いから……」
『冗談だよ。今度は迷わないようにしっかり覚えておけよー。……おーい、玲夏』
蓮がメイクルームの扉をノックすると、扉が開いて玲夏が顔を出した。
「なんで蓮となぎさちゃんが一緒にいるの?」
『なぎさちゃんが道に迷っていたからこの優しい優しい一ノ瀬蓮さんが送り届けてあげたんだよ』
「はい……。スタジオからメイクルームまでの道がわからなくなってしまって、通りかかった一ノ瀬さんに連れて来てもらったんです」
恥ずかしくなってうつむくなぎさの肩に玲夏の手が触れた。
「そっか。遅いから心配していたの。蓮に変なことされなかった?」
「特には……」
(変なことはされなかったけどラブシーンの覗き見はしてしまいました……なんて言えない)
『玲夏ー。それだと俺がまるでめちゃくちゃ女たらしのような言い方じゃねぇか?』
「あれー? めちゃくちゃ女たらしじゃなかったの?」
『酷《ひど》っ。お前のこともたらし込んでやろうか?』
「遠慮しておきまーす」
軽口を叩く玲夏と蓮は仲の良い友達関係に見えた。今の玲夏は早河と一緒にいる時の彼女とは少し違う。
(所長以外の男の人の前だと玲夏さんってこんな感じなんだ)
友達の前での顔と、昔の恋人の前での顔。
どちらも本当の玲夏の顔なのに、少しだけ、何かが違っていた。
「ありがとうございました」
『ここ、なぎさちゃんが迷い込んでいた所から近かったんだよ。なぎさちゃんって方向音痴だなぁ。探偵の助手って聞いてたからもっと凄腕のSPみたいな女を想像してた』
蓮が笑っている。さっきから彼に笑われてばかりだ。
「だってテレビ局って広いから……」
『冗談だよ。今度は迷わないようにしっかり覚えておけよー。……おーい、玲夏』
蓮がメイクルームの扉をノックすると、扉が開いて玲夏が顔を出した。
「なんで蓮となぎさちゃんが一緒にいるの?」
『なぎさちゃんが道に迷っていたからこの優しい優しい一ノ瀬蓮さんが送り届けてあげたんだよ』
「はい……。スタジオからメイクルームまでの道がわからなくなってしまって、通りかかった一ノ瀬さんに連れて来てもらったんです」
恥ずかしくなってうつむくなぎさの肩に玲夏の手が触れた。
「そっか。遅いから心配していたの。蓮に変なことされなかった?」
「特には……」
(変なことはされなかったけどラブシーンの覗き見はしてしまいました……なんて言えない)
『玲夏ー。それだと俺がまるでめちゃくちゃ女たらしのような言い方じゃねぇか?』
「あれー? めちゃくちゃ女たらしじゃなかったの?」
『酷《ひど》っ。お前のこともたらし込んでやろうか?』
「遠慮しておきまーす」
軽口を叩く玲夏と蓮は仲の良い友達関係に見えた。今の玲夏は早河と一緒にいる時の彼女とは少し違う。
(所長以外の男の人の前だと玲夏さんってこんな感じなんだ)
友達の前での顔と、昔の恋人の前での顔。
どちらも本当の玲夏の顔なのに、少しだけ、何かが違っていた。