早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
パンプスサイズの靴箱を開けたなぎさと矢野が同時に歓喜した。
「あった!」
『おお! さっすが早河探偵の助手!』
二人は歓びのハイタッチを交わす。
{何があった?}
「木村さんと……きっとこの女の子が美月ちゃんですね。木村さんと美月ちゃんが一緒に歩いているところを隠し撮りした写真と、その二人の後を尾行している男が写っている写真がありました」
{男は南明日香に殺された柴田じゃないか? 柴田は浅丘美月をストーカーしていたんだ}
「多分そうです。柴田が美月ちゃんと木村さんのデート現場を尾行しているとこを佐々木里奈が尾行して隠し撮りしたんですね」
それは不思議な写真だった。仲良さげに歩くカップルの後ろに影のように付きまとう男、見ているとだんだん薄気味悪くなってきた。
隼人と美月のデートを隠し撮りした里奈はどんな気持ちだったのだろう。元カレのデート現場なんて、見たい女はいないのに。
里奈のマンションから数十メートル離れた場所で早河はイヤモニ越しになぎさと矢野の報告を聞いていた。
(木村隼人と浅丘美月を尾行していた柴田を、さらに佐々木里奈が尾行していた。佐々木里奈と柴田……南明日香が繋がった)
携帯が鳴る。上野警部からだ。
{早河の読み通りだった。南明日香の偽のアリバイで借りられたDVDと佐々木里奈が借りたDVD、ケースのシールから同じ店の同じ商品だった。佐々木里奈はその店の会員ではない}
『中央区に職場と家のある人間が北千住のレンタルビデオ屋なんか使いませんからね。なぎさが指摘していましたが、佐々木里奈と南明日香、髪型や髪の色が似ているそうですよ』
{南明日香は事件前に人工毛をつけて髪を伸ばしている。アリバイ偽装のために佐々木里奈の髪型を真似たんだろう}
湿った風から雨の匂いがした。黒い雲が街を覆っている。パラパラと降り出して来た雨を避けるために早河は車に避難した。
{だが佐々木里奈にハッキングの知識があったとは思えない。アゲハは柴田と美月ちゃんの合成写真まで作って明日香に送りつけ、柴田の携帯をハッキングして偽のメールも作り上げている。あの佐々木里奈にそんなことができるのか}
『共犯がいると思います。それも男の』
{なぎさちゃんから送られてきたもう一枚の写真にあったあの腕時計の男か。……なぁ早河。美月ちゃんの心を抉《えぐ》って傷付けたアゲハが俺は許せない}
上野の声は怒りに震えていた。温厚な彼がここまで怒りを顕《あら》わにするのは珍しいし。アゲハはそれだけの重罪を犯しているのだ。
『わかりますよ。俺だってこんなこと許せない。アゲハは自分は手を下さずに明日香を使って柴田を殺させ、浅丘美月を陥れた。人を思い通りに操って動かす……カオスの常套手段にはうんざりします』
{そのアゲハをさらに操っている黒幕がいる}
『佐々木里奈の身近にパソコンに精通している人間を探せばアゲハの後ろにいる黒幕に辿り着けるかもしれません』
「あった!」
『おお! さっすが早河探偵の助手!』
二人は歓びのハイタッチを交わす。
{何があった?}
「木村さんと……きっとこの女の子が美月ちゃんですね。木村さんと美月ちゃんが一緒に歩いているところを隠し撮りした写真と、その二人の後を尾行している男が写っている写真がありました」
{男は南明日香に殺された柴田じゃないか? 柴田は浅丘美月をストーカーしていたんだ}
「多分そうです。柴田が美月ちゃんと木村さんのデート現場を尾行しているとこを佐々木里奈が尾行して隠し撮りしたんですね」
それは不思議な写真だった。仲良さげに歩くカップルの後ろに影のように付きまとう男、見ているとだんだん薄気味悪くなってきた。
隼人と美月のデートを隠し撮りした里奈はどんな気持ちだったのだろう。元カレのデート現場なんて、見たい女はいないのに。
里奈のマンションから数十メートル離れた場所で早河はイヤモニ越しになぎさと矢野の報告を聞いていた。
(木村隼人と浅丘美月を尾行していた柴田を、さらに佐々木里奈が尾行していた。佐々木里奈と柴田……南明日香が繋がった)
携帯が鳴る。上野警部からだ。
{早河の読み通りだった。南明日香の偽のアリバイで借りられたDVDと佐々木里奈が借りたDVD、ケースのシールから同じ店の同じ商品だった。佐々木里奈はその店の会員ではない}
『中央区に職場と家のある人間が北千住のレンタルビデオ屋なんか使いませんからね。なぎさが指摘していましたが、佐々木里奈と南明日香、髪型や髪の色が似ているそうですよ』
{南明日香は事件前に人工毛をつけて髪を伸ばしている。アリバイ偽装のために佐々木里奈の髪型を真似たんだろう}
湿った風から雨の匂いがした。黒い雲が街を覆っている。パラパラと降り出して来た雨を避けるために早河は車に避難した。
{だが佐々木里奈にハッキングの知識があったとは思えない。アゲハは柴田と美月ちゃんの合成写真まで作って明日香に送りつけ、柴田の携帯をハッキングして偽のメールも作り上げている。あの佐々木里奈にそんなことができるのか}
『共犯がいると思います。それも男の』
{なぎさちゃんから送られてきたもう一枚の写真にあったあの腕時計の男か。……なぁ早河。美月ちゃんの心を抉《えぐ》って傷付けたアゲハが俺は許せない}
上野の声は怒りに震えていた。温厚な彼がここまで怒りを顕《あら》わにするのは珍しいし。アゲハはそれだけの重罪を犯しているのだ。
『わかりますよ。俺だってこんなこと許せない。アゲハは自分は手を下さずに明日香を使って柴田を殺させ、浅丘美月を陥れた。人を思い通りに操って動かす……カオスの常套手段にはうんざりします』
{そのアゲハをさらに操っている黒幕がいる}
『佐々木里奈の身近にパソコンに精通している人間を探せばアゲハの後ろにいる黒幕に辿り着けるかもしれません』