早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
{つまり佐々木里奈はしばらく家に帰らない予定だってことか}
早河はそんなこと気にもしていない冷静な口調だった。それが寂しいような、ホッとするような。
落胆するなぎさの肩を矢野が軽く叩く。振り向いた彼女に矢野は手に持つ写真立てを見せた。
「これって……」
{何があった?}
「大学時代の……佐々木里奈と木村さんの写真です」
『ベッドのサイドテーブルに写真立てに入れて飾ってありましたよー』
なぎさに続いて矢野が報告した。
{元カレの写真を写真立てにねぇ。木村隼人のことを忘れてなかったようだな}
「元カレの写真を飾っておくって自傷行為のようなものなんですけどね。佐々木里奈、大学時代はショートヘアーだったんですね。個人的な意見ですがショートの方が似合ってる」
写真にはショートヘアーの里奈が隼人と腕を組んで写っていた。里奈は笑顔、澄ました顔をした隼人も今よりは髪色が明るく軽薄な雰囲気だ。
ブログに載せていたどんな顔よりも隼人と一緒にいるこの写真の里奈が一番幸せそうだった。
(本気で木村さんのこと好きだったんだ……)
隼人の隣にいる里奈を見て心が痛む。この部屋の主の里奈は別れてからもずっと、隼人のことを想っていた。
『なぎさちゃん、感傷に浸るのは後でね』
「はい……」
矢野に促されて再び家宅捜索を始める。問題はここから。佐々木里奈がアゲハである決定的な証拠を見つけ出せれば隼人の依頼に応えられる。
『例えば、なぎさちゃんがこの部屋の住人だったとして、人に見られたくない物を隠すならどこにする?』
「人に見られたくない物を隠す……」
『秘密の日記や手帳とか、犯罪的な何かとか。俺も一応目ぼしい場所は探したけど、そういった物が見つからなくてさー。女の気持ちは同性の方がわかるかなって』
矢野は床に座り込み、室内を見渡した。なぎさも部屋を見回す。
テレビが置いてあるテレビ台、大量のファッション雑誌の入るラック、タンス、ベッド、ベッド脇のサイドテーブル、ウォークインクローゼット……。
先ほど見たクローゼットの中の何段にも積まれた靴箱が気になった。
クローゼットを開けて積まれた靴箱の蓋をひとつひとつ開ける。矢野もなぎさの意図がわかったらしく、靴箱の蓋を開ける作業を手伝った。
イヤモニ越しに早河もなぎさと矢野を見守る。
早河はそんなこと気にもしていない冷静な口調だった。それが寂しいような、ホッとするような。
落胆するなぎさの肩を矢野が軽く叩く。振り向いた彼女に矢野は手に持つ写真立てを見せた。
「これって……」
{何があった?}
「大学時代の……佐々木里奈と木村さんの写真です」
『ベッドのサイドテーブルに写真立てに入れて飾ってありましたよー』
なぎさに続いて矢野が報告した。
{元カレの写真を写真立てにねぇ。木村隼人のことを忘れてなかったようだな}
「元カレの写真を飾っておくって自傷行為のようなものなんですけどね。佐々木里奈、大学時代はショートヘアーだったんですね。個人的な意見ですがショートの方が似合ってる」
写真にはショートヘアーの里奈が隼人と腕を組んで写っていた。里奈は笑顔、澄ました顔をした隼人も今よりは髪色が明るく軽薄な雰囲気だ。
ブログに載せていたどんな顔よりも隼人と一緒にいるこの写真の里奈が一番幸せそうだった。
(本気で木村さんのこと好きだったんだ……)
隼人の隣にいる里奈を見て心が痛む。この部屋の主の里奈は別れてからもずっと、隼人のことを想っていた。
『なぎさちゃん、感傷に浸るのは後でね』
「はい……」
矢野に促されて再び家宅捜索を始める。問題はここから。佐々木里奈がアゲハである決定的な証拠を見つけ出せれば隼人の依頼に応えられる。
『例えば、なぎさちゃんがこの部屋の住人だったとして、人に見られたくない物を隠すならどこにする?』
「人に見られたくない物を隠す……」
『秘密の日記や手帳とか、犯罪的な何かとか。俺も一応目ぼしい場所は探したけど、そういった物が見つからなくてさー。女の気持ちは同性の方がわかるかなって』
矢野は床に座り込み、室内を見渡した。なぎさも部屋を見回す。
テレビが置いてあるテレビ台、大量のファッション雑誌の入るラック、タンス、ベッド、ベッド脇のサイドテーブル、ウォークインクローゼット……。
先ほど見たクローゼットの中の何段にも積まれた靴箱が気になった。
クローゼットを開けて積まれた靴箱の蓋をひとつひとつ開ける。矢野もなぎさの意図がわかったらしく、靴箱の蓋を開ける作業を手伝った。
イヤモニ越しに早河もなぎさと矢野を見守る。