(一)この世界ごと愛したい
「敵が攻めてきても、誰が傷付いても、何を失っても、絶対に動かないでほしいの。」
「ごめん、意味わかんない。」
私にもこの本陣が、この先どんな攻撃をされるか分からない。
それでも敵に攻められても、簡単には抜けない防衛陣と。離れた場所でも私が異変に気付ける地の理。
トキが凄腕の軍師で、状況判断に長けてることも承知の上だ。
「…私を信じて、ここで待ってて。」
「…リンが戻らなかったら?」
確かに、私が戻れる保証はない。
「私が戻らないのは討たれた時だけ。夜明けまでに戻らなければ約束通り、アキト軍はレンを連れて王宮まで全軍撤退でよろしく。」
「夜明けまで、か。」
「……。」
無理は百も承知。
でも私は、信じてほしいとしか言えない。
「俺は待つ。」
「はあ。」
割って入ってきたアキトが待つと断言。
トキはもう、頷くしかなくなる。
「…動かない約束は夜明けまでだからね。」
「ありがとう。」
そしてこんな非情な約束をして、ごめんと。
心の中で謝罪をして。
「…姫、まだ時間ある?」
「ん?大丈夫だよ?」
真剣な表情のレンが私に話があると言う。
それに謎に気を利かせたトキが、アキトとるうを引き摺って丘を少し降る。
人払いまでしなくても…。
と思ったけどここは大人しく聞こう。
「…ここから戦場を見てると。」
城の方を見つめて、レンは苦しそうに表情を歪め話し始める。