彼の溺愛の波に乗せられて
「雅、行こう」

俺は優しく声をかける。
寂しいと言えなかったのか…
俺が遠慮させちまったんだよな。

「天寿さん。俺見張ってるからね。何かあれば冗談抜きで攫いに行くよ?」

優弥は目をギラっとさせて口元に僅かに笑みを浮かべ椅子に座ったまま俺を見上げた。

「それは諦めてくれ。雅は渡さない」

俺は真っ直ぐに優弥を見ると、彼はまるで真意を探るように俺をジッと見てからコクリと頷き、雅を再びにこやかに見た。

「だって。雅ちゃん。よかったね」

雅は耳を赤くしてまだあたふたしている。

「とりあえずここの会計はよろしくね天寿さん。じゃ、俺帰りまーす。またね、雅ちゃん!」

そう言って雅の頭をポンと撫でて俺にしてやったりみたいな笑みを向けて行ってしまった。

触んなよ。
俺の雅だぞ。
馴れ馴れしいな本当に。

つい眉間にシワが寄る。

「て、天寿…?」

何も言わない俺に雅が顔を覗かせるように見上げてくる。
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