一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
「そう……。母が亡くなった時、親父は長期の航海中でね。すぐには帰ってこられなかったんだ。俺は当時中学生で、こんな時も仕事優先なのかって親父に怒りを覚えたよ。それから親父とはあまり口をきかなくなったんだ」

 晃輝はもう一度水を飲んで、深いため息をついた。

「……頭では仕方がなかったってわかっていたんだけど、どうしてもわだかまりを解消できなかった。子供だったんだな」

 晃輝は自嘲するけれど、芽衣はそんな風には思わなかった。

 身内を失った喪失感は、そう簡単には埋まらない。つらい気持ちをぶつけるように、なにかを恨みたくなる気持ちは芽衣にも身に覚えがある。

「さすがに同じ仕事についてからは親父に対するわだかまりは完全になくなった。当時の親父がどれだけ責任の重い職務に着いていたのかよくわかったし。もうとっくに許していたんだけど、ただ……きっかけがなかったんだ」

 そう言って晃輝は頭を掻いた。

「最近ここへよく来るようになって話をするようになったから、お互いにあの時のわだかまりはなくっているのは感じてたけど。やっぱりちゃんと伝えるべきだと思って」

「よかったです……。マスター、嬉しそうでした」

 お互いにお互いを思っていることを知っていた芽衣にとっても、胸が熱くなる場面だった。

 晃輝が穏やかな笑みを浮かべて、芽衣を見た。

「秋月さんのおかげだ。君が俺をここへ誘ってくれたから」

「そんな……! 私はなにも」

 慌てて芽衣は首を横に振る。芽衣が晃輝を誘ったのは、ただ自分の料理を彼に食べてほしいと思ったからだ。

「いや本当にそう思う。……ありがとう」

 そこで客たちがガタガタと席を立つ音がした。皆、こちらへやってくる。

「芽衣ちゃん、お会計お願い」

「え、もう帰られるんですか?」

 てっきりもう少しゆっくりするものと思っていた芽衣は驚いて声をあげた。

「うん、もう十分ゆっくりさせてもらったし。明後日のイベントの準備があるのを思い出したんだよ。今日はありがとう」

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