捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される
皆さんを見送った後、一人店内を片付ける。
賑やかだったあの時間はまるで夢のようで、今は差し込む夕日が少しばかりの寂しさを演出してくれている。

カチャカチャと食器を片付けていると、ソレイユの扉がカラランと開く。祖父を送り届けてくれた穂高さんが戻ってきたのだ。

「穂高さん、ありがとうございました」
「佐倉さんすごく喜んでた。いいおもてなしができてよかったね」
「はい。穂高さんが協力してくれたおかげです」
「俺は何もしてないよ。莉子が頑張ったからだろう?」

そうやって私を褒めながら、一緒に片付けを手伝ってくれた。
この計画を穂高さんに話したとき、とてもいい提案だと褒めてくれた。最初は一緒にキッチンを手伝うと言ってくれたけど、穂高さんもおもてなししたい常連さんの一人。だから結愛ちゃんにお願いして手伝ってもらったのだ。結愛ちゃんはすぐに快諾してくれて、本当にありがたかった。

「とても素敵な時間だったけど、やっぱり寂しいかな」
「そうだね。この場所は、俺たちが出会った場所でもあるから、俺にとってもとても大切でかけがえのない場所だよ。でも莉子はまたカフェを経営したいと思っているんだろ」
「はい、それはもちろん」
「だったら、これは別れではなくて、門出だね」
「門出……?」
「そう。ここからまた、莉子は新しい人生を歩んでいくんだよ」

穂高さんが優しく微笑む。
これからの未来は明るいのだと教えてくれているみたい。

「莉子、左手を出して」
「はい?」

言われるがまま左手を出すと、穂高さんが優しく受け止めるように手を添えた。そして嵌められる、シルバーのリング。

「これって……」
「出来上がったって連絡があったから、受け取ってきたんだ。俺のは莉子が嵌めて」

リングケースから、お揃いの結婚指輪を抜く。そして穂高さんの左手薬指にすっと嵌めた。

「ありがとう」

嬉しそうに微笑んでくれる、その笑顔が眩しい。お揃いの結婚指輪は、穂高さんとの繋がりがより一層深くなったような気がして胸を震わせる。

「私の新しい人生には、ずっと穂高さんが隣にいてくださいね」
「もちろん。俺のほうこそよろしく」

腰を引き寄せられてぴっとりとくっつく。二人で目に焼き付けたソレイユは夕日に照らされてオレンジ色であったかくて、キラキラと輝いて見えた。

「コーヒー飲みます? お疲れ様会で」
「いいね。いただくよ。その前に――」

ちゅっと口づけられたキスは甘くて優しい。

「お疲れ様のご褒美」
「ふふっ、嬉しい」

私は穂高さんの首に手をまわして、みずからぎゅうっと彼を引き寄せた。
人を愛する喜びを体いっぱいに感じながら――。

【END】
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